ミヒャエル・エンデ 『MOMO』

読書

あらすじ

時間に追われ、落ち着きを失って、人間本来の生き方を忘れてしまった現代の人々。町に現れた灰色の男たちが、人々から時間を奪っている…。

人々の悩みを聞き、心を癒す不思議な力を持っていた少女モモは、灰色の男たちから時間をとりもどし、人生のよろこびを回復させるために勇気を出して立ち上がる。

この本には、ハッとさせられるような言葉がたくさん書かれていました。

いくつか選ばせてもらった言葉とともに、解説と感想を述べさせてもらいます。

1.「世の中の不幸というものはすべて、みんながやたらとうそをつくことから生まれている」

これは意図的なうそだけでなく、せっかちすぎたり、正しくものを見極めずにうっかり口にしたりするうそのことも含んでいます。

このことを教えてくれる登場人物は、ほかの人ならすぐに回答するような質問に対して、一晩考えてから回答したりします。

大切なことは、回答が早いか遅いかではなく、しっかり考えられた回答か、相手に伝えるにあたって適切かどうか、そういったことを教えてくれていると感じました。

相手の言っていることを情報として処理していないか?

その言葉の背景の、発言に至った思いがあることをわかろうとしているか?

そういった本当の意味での耳をかたむけることの大切さ。

忘れてはいないでしょうか?

2.「ウシロムキニススメ!」

さかさま小路という場所があるのですが、ここは、早く進もうとするとゆっくりに、ゆっくり進むと早く進めるという道になります。

ここを読んでいて思ったのは、実際に体感してわかることでもあるなと思いました。

というのも、私の例にはなりますが、昔と今で本の読み方が変わりました。

文章を字面とイメージで補いながら、なんとなくサーっと読んでいたんですね。

でも、それだと、意味を正しく理解できていなかったり、雰囲気で捉えることしかできていなかったなって、あとになってわかりました。

今は、わからない言葉はまず意味を調べます。文字を読めなければ、漢字辞典を開きます。

また、内容の理解が曖昧なら、何度か読み返してわかろうとする。

こういう読み方になりました。

自分の感覚を信じることも大切だと思いますが、イメージで補おうとしている部分には、内容を正しく捉えられていないという側面があると理解しておいた方がいいのかもしれません。

これはあくまでも私の例ですが、うしろむきに進む、ゆっくり進むことで早く進めたと感じるのは、自分の得たかったものが、早ければ得られるというものではなかった。

ゆっくり進むことで獲得できたものこそ、自分が欲していたものだったんだと、やはり体感してわかるものなのかなと思いました。

3.「もしほかの人々とわかちあえるのでなければ、それを持っているがために破滅してしまうような、そういう富がある」

モモが聞いた(人間以外の星の)声、モモが見た唯一無比の奇跡の花、それらを『あざやかな記憶』と呼んで、「そういう富」と言ったのかなと思いました。

あざやかな記憶もわかちあえなければ、はげしさをもってのしかかってくる孤独となる。そう捉えると、時間に追われ人間本来の生き方を忘れている人々と、あざやかな記憶というだけの孤独を抱える人は、どちらも幸福とは言えず、わかちあってこそ、わかちあえる相手がいることがこそ幸福というのではないかと思いました。

ほかにも、

「本当の時間というのは、時計やカレンダーで測れるものではない」

「それを話すためには、まずおまえの中でことばが熟さなくてはいけない」

「待つこともできなくてはいけない」

「キヲツケテアゲルヒトガ ダレカヒツヨウデスモノ」

といった、当たり前のことに疑問を抱かせてくれる言葉、熟すまでに時間の経過を必要とすること、教訓や、勇気をもらえるような言葉がたくさん書かれている素晴らしい本でした。

社会のペースで忙しなく過ごすあなたに、心温まりたいあなたに、親しい友人とよびあえるような関係を大切にしたいあなたに!

『MOMO』オススメです。

タイトルとURLをコピーしました